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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 71以上を背景として,早くから必要性が認識されていたのが,中小企業の組織化による市場経済における中小企業の地位の向上策であった。昭和24年には,早くも中小企業の共同化のための立法として中小企業等協同組合法の制定を見た。これは,資本主義における弱者の相互扶助を確保しようという,いわゆる「ロッチデール原則」を我が国の中小企業分野において体現しようとするものであったが,他の協同組合,消費生活協同組合,漁業協同組合,森林組合等とは異なりきわめて複雑な協同組織として動いていくこととなる。もう一つの協同組合,農業協同組合は我が国の保守政権の基盤組織として,協同組合は独占禁止法の適用を除外するという規定(現行法では22条)にもかからず,強固な独占体として,数多くの独占禁止法違反事件の主体となっている16。中小企業の組織化については後述するが,サンフランシスコ講話条約発効直後に,商工会議所法が制定(昭和28年)されていることにここで注目しておきたい。(3)高度経済成長と中小企業法制の展開サンフランシスコ講和条約の発効から高度経済成長期,とりわけ開放経済(日本の貿易の戦後の保護貿易から自由貿易へ)にむけて,我が国企業の国際競争力強化のための施策・立法が相次ぐ。30年代になっての独占禁止法の更なる緩和改正,あるいはあらたな統制経済法といわゆる特定産業振興臨時措置法案は,いずれも保守勢力の支持すら得られず廃案となる17。これだけをみると,我が国の経済秩序に独占禁止法制が定着してきたかに見えるが,これを中小企業分野に見てみるとどうであろうか。昭和31年になると,中小企業振興資金助成法が制定され,さらに設備近代化資金制度,中小企業信用保険公庫の設立をみる。この次期で注目しておきたい16 拙稿「全農による段ボール取引の優越的地位の濫用(全国農協連合会事件)」別冊ジュリスト独禁法審決・判例百選第5版,同「農業協同組合の奨励措置による拘束(山口県経済農業協同組合連合会事件)別冊ジュリスト経済法判例・審決百選17 城山三郎の小説「官僚たちの夏」は,この法案を成立させ,独占禁止法制にとどめを刺そうとして奮闘する男のロマンである。なぜこの法案が成立を見なかったかは,調査をしたが不明であった。農協が反対をしたのが大きかったという証言があったが,なぜ農協が反対したかもわからなかった。