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概要

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72 高知論叢 第114号のは,昭和32年の中小企業団体の組織に関する法律(いわゆる中団法),昭和37年の商店街振興組合法である。また,昭和31年の下請代金支払支援等防止法(下請法)と昭和35年の商工会の組織等に関する法律(商工会法)が制定される。昭和38年に制定された中小企業近代化促進法は,いわゆる中小企業政策立法の典型とされる。30年代における中小企業の近代化の目的を達成するために資金提供の仕組みをつくるとともに,中小企業の組織化(本来は自主的組織であるはずの協同組合をも含めた「上からの」組織化・共同化)を行おうというものであった。中小企業種別振興臨時措置法(昭和31年),中小企業振興資金等助成法(昭和38年)は,資金提供とそれを背景とした行政指導によって政策目的を実現するという,いわば我が国の経済立法の典型的仕組みを維持するものであった。後者によって,中小企業の組織化・共同化が進んでいくことになるが,その中の一つにこの時代のいわば「時代の風景」といってもよい工場集団化が形成されていくのである。さらに,貿易自由化,開放体制への意向をみすえて,とくに近い将来に貿易において重要な「戦場」となるはずの分野の振興が「臨時措置法」として制定されていく。機械工業振興臨時措置法(昭和31年),電子工業振興臨時措置法(昭和32年)などである。先に見た明治期から大正期にかけての経済立法と極めて近似的である。ただし,両者の相違点は,昭和期においてのそれは「独占禁止法という邪魔者」18があるがためにカルテル創設法制というかたちがとれないこと,さらに,日本国憲法の「制約」のために行政による強権的な命令(統制)というかたちがとれないことであった。しかしながら,これも戦前からの経験によって行政が取得した「資金提供を背景とした行政指導」という非公式の働きかけによって政策目的は実現されていくのである。第3章 現代までの中小企業法の展開とその課題前章において,中小企業政策及び中小企業立法を明治から高度経済成長期までみてきたが,これ以降現代までは,現代中小企業の課題と関連させて論ずる18 筆者の聞き取り調査に対する通商産業省の元高級官僚の言葉。この方は,先に触れた城山三郎の小説の登場人物のモデルの一人である。