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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 73こととする。この課題は,先に述べた政策・立法の結果でもある。(1)中小企業の組織化① 中小企業の組織化と協同組合「中小企業者」はもちろん事業者であるから,第一の属性としては,資本主義における営業の自由の享受者である。他方,大企業との経済力・取引力の格差から,中小企業の平等権という問題もまた生ずる。その背景には中小企業労働者の生存権の確保という課題があるのである19。戦後の独占禁止法制(競争秩序)において相対的弱者である中小企業は,組織化・共同化することによって,その取引力を強めていくということが不可欠となる。そのために想定されている制度が協同組合である。これは,資本主義社会における相対的弱者が,相互扶助をする(ロッチデール原則)とともに共同することにより自らの地位をたかめ,より強大な力に対する対抗力を形成することを目的とする。このようなプロセスの背景には中小企業者や中小企業労働者にたいする生存権的基本権の保障の要請があるのである。我が国においては,消費生活協同組合,農業協同組合,漁業協同組合,森林組合などとともに,中小企業の協同組合のために中小企業等協同組合法が制定されている。② 中小企業の組織化と商工組合商工組合とは,「中小企業の組織化に関する法律(昭和32年)」(中小企業団体法)に基づき作られる「中小企業の団体」である。しかしながら,商工組合は,協同組合とは異なりその結成における自主性に問題があり,また,中小企業の組織であるということ自体にも疑問がある。同法の立法過程を簡単に見ておこう。昭和27年におけるサンフランシスコ講和条約の発効をふまえ,政府はGHQに「押し付けられた」独占禁止法の改正に着手するとともに,立法自主権回復後の最初の立法措置として「特定中小企業の安定に関する臨時措置法(昭和2719 正田彬・前掲「現代における中小企業と法」1,38頁,法律時報49-2