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概要

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74 高知論叢 第114号年)」を制定した。特定の中小企業分野において当該産業全体にわたる調整措置を目的とするもので,員外者に対して強制的調整を可能とする,いわばアウトサイダー規制を伴う法律であった。28年になると,臨時措置法ではなく恒久法として中小企業安定法が制定され,調整措置は「調整組合」として制度化された。そしてこの法律が昭和32年に中小企業団体法となるのである。中小企業団体法による商工組合は,すべての事業分野において組織することができ,員外者に対する加入命令とともに事業活動規制命令を発することができる。立法当時は不況対策を主として目的としていたが,37年改正によって合理化対策にも対応できることとなった。もとより,不況時における対応策,あるいはどう合理化を進行させるかということは,まさにそれぞれの企業,企業者の創意工夫の見せ所,競争力の源泉でもあるところ,同法はこれらの当該業界における調整の問題としてしまった。同時期に,独占禁止法が改正され(28年改正法)「不況カルテル」「合理化カルテル」が同法上,適法なものとして制度化される。このようにして,不況に対する対処,合理化は業界全体における「調整」の問題とされるのである。その後,独占禁止法は強化改正によって「不況カルテル」「合理化カルテル」は廃止されるが,中小企業団体法はその後も,若干の性格変更を加えながら現在までの残ることとなる。中小企業団体法の更なる問題点は,商工組合に員数の三分の一まで大企業の参加が認められることである。員数では少数でも大企業の経済力・取引力の強さをかんがえれば,同法は「大企業の指導のもとの私的統制団体」としての性格を有するものと断ぜざるを得ない。様々な分野で大企業の指導のもとに中小企業の調整(カルテル)が行われるという例を多く見ることになる。さらに,同法は商工組合の設立する地域的範囲として,「一または二以上の都道府県の区域」において「当該地区の二分の一以上が組合員でなければならない」と定めているが,ここで所管官庁との関わりが予定されているのである。ここでも補助金優遇を背景とした官民結合型の体制をみる。③ 組織化と協同組合 再論中小企業団体法による商工組合が戦前から続く「私的統制プラス行政による