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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 75非公式な統制」のパターンをひきついでいるとすれば,協同組合における組織化は,日本国憲法および独占禁止法制に整合的なものと言えよう。しかしながら,協同組合の中には農業協同組合を典型として,あらたな独占組織としての性格を強めてきているものもある20。では,中小企業等協同組合はどうであろうか。中小企業等協同組合といっても,自主的な相互扶助組織から商工組合の大企業会員をのぞいたものとほぼ同じというものまであり,一概には言えない。その性格を判断するメルクマールとなるものが,弱者たる立場を解消するために共同して獲得した対抗力を誰に向けるかであろう。たとえば,協同組合はいわゆる「共同施設」を作ることが認められている。それは,共同販売期間であったり,共同購入組織であったり,共同作業場であったりする。なかには,独占禁止法に違反するカルテルの実質を有するものもある。これは,大企業から購入する原材料(たとえば,製パン業ならば小麦粉)の価格交渉を有利にするために中小の製パン業者が団結して交渉に当たるというのは,独占禁止法上の問題は起きないであろう。しかしながら,パンの消費者向け小売価格の相談をするとなるとこの団結力が弱者たる消費者に向けられることとなり独占禁止法上の適用除外とはならないのである。協同組合の発展により,その立場を強めている組織も見られるが,協同組合設立の趣旨(ロッチデール原則)を逸脱する協同組合は,協同組合として独占禁止法の適用除外の対象とならないということである。(2)中小企業基本法の意義と性格ここで,昭和38年に制定された中小企業基本法の意義と性格について簡単に触れておこう。昭和38年に中小企業基本法が「中小企業の進むべき新たなみちを明らかにし,中小企業に関する政策の目標を示すため」(同法前文)制定されたが,他の「基本法法制」と同様に,同法自体になにがしかの法的権利の実現やそのための手続き規定がある訳ではない。基本法として,その後の政策的な立法作業,ある20 前掲注15の拙稿参照。