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概要

kouchirouso_114_20180329

78 高知論叢 第114号地元の事業者が承諾しなければ出店できないという仕組みをつくってしまったのである。多くの論者は,競争秩序では出店を自由とすべき(最終的には法はその方向に動いていくが)という立場が支配的であった。ただ,現在における地域の中小企業の観点からすれば,多くの地元商店街の壊滅的状況に鑑み,より慎重な計画的出店の議論があってしかるべきであったと考える論者も少なくない。筆者は,この件に関しては次の二点を主張した21。競争秩序の観点からは,店舗の出店を阻止するということは望ましくない。しかしながら,出店する企業と地元商店街の事業者との競争力の格差があまりにも著しい場合には,競争基盤の形成を行った上での出店を認めるべきである。他方,実際の法運用は地元事業者との利害調整の場の形成となっており,極めて不透明である。かかる法運用が大店法の実質ならば,かかる法律は競争秩序とは無縁である。独占禁止法の専門家のなかに,商工会議所や商工会に批判的な意見が多いのは,それらがこの次期における法運用の不透明性の場となったことも一因であろう。(2)地域振興と地域中小企業の支援日本経済が低成長期に入ると,地域に着目した中小企業法制がめだって展開されるようになる。昭和から平成に架けて,特定不況地域中小企業対策臨時措置法,産地中小企業対策臨時措置法,特定商業集積の整備の促進に関する特別措置法,特定中小企業集積整備法,特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法,特定中小企業集積法などである。これらは,いわゆる地域産業,地場産業の育成にかかるものである。さらに重要なのは,地域の中小企業を支援する仕組みづくりであろう。平成5年になると,中小企業基本法23条を受けて,「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」(小規模事業者支援促進法)が制定される。小規模事業者に焦点を当てての支援法の成立である。これは,従来か21 拙稿「規制緩和の流れと大店法の『見直し』」ジュリスト1044号,1994年