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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 79らあった中小企業設備貸与制度,小規模企業共済制度,石油危機後の小規模経営改善資金融資制度,中小企業倒産防止共済制度,中小企業体質改善資金融資制度を受けての立法であったが,重要なのは,中小企業の自立のための経営改善を視野に入れての中小企業の支援・指導という発想が生まれたことであろう。それでは,かかる指導は誰が行うのであろうか。ここで重要な役割をはたすべきものとされたのが,商工会議所・商工会であった。商工会議所・商工会は,市町村の行政区域ごとにその地区内の商工業者を会員として地域組織であり,会員相互の利益増進ともに地域社会の向上発展を目的としている民間経済団体である。商工会議所・商工会の特徴的な点は,まず,業種を問わずに地域の事業者が所属していることである。同業者の団体と異なり,市場における競争との関わり方が間接的である。第二に,行政区域ごとに組織されていることにより,地域の行政機関とのつながりが密接になるということがある。このことから,商工会議所・商工会は,民間の経済団体でありながら,公益団体的性格をも有するという特殊性を示してきた。中小企業相談員制度は,小規模事業者対策として戦後いち早く導入(昭和26年)された。当初は,地域の行政機関がこれを行うという案もあったが,行政区画ごとに組織された商工会議所(のちに商工会も)に着目し,これを通じて行うこととなったのである。国から都道府県を通じて商工会議所・商工会に設けられた相談所に補助金が交付され,経営改善普及員が相談業務にあたるというものである。経営改善普及員制度は,一定レベル以上の能力を有する指導員に公的な資格を与え(準公務員的な性格を有するものとされた),市町村単位で組織された商工会議所・商工会に配置され(相談員は総数で500人程度),地域の事業者の相談業務に当たるというものである。ここにおいて私的な経済団体である商工会議所・商工会が,地域の事業者の経営改善ひいては地域社会の発展という公益性を有することとなったのである。これが,平成になっての小規模事業者支援促進法においても活用されることになる。中小企業基本法23条を受けての小規模事業者の支援促進業務は,地域における商工会議所・商工会において行われることとなった。これが,現在,