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概要

kouchirouso_114_20180329

80 高知論叢 第114号地域における中小企業の支援,ひいては地域社会に活性化の議論において注目されることとなるのである。総じていえば,我が国の中小企業法において焦点が当てられてきたのは,以下のような視点であったと思われる。本稿でみてきたように,我が国において中小企業とは,国家経済の目的との関わりでの中小企業,大企業との関わりにおける中小企業,都市経済あるいは都市生活を支える中小企業などである。中小企業と地方の一地域の問題は,従来から重要な視点となっていない。すなわち,本稿で述べてきた中小企業問題は,多くは都市の視角で述べられてきたといってよい。とりわけ,地方の過疎地域の中小企業が論じられることは極めて少ない22。筆者は,過疎地域における小規模事業者の性格と法制度が極めて重要な課題であると考えている23。過疎地域の経済を支えているのは多くは地域の中小企業であり,多くは,経営上の何らかの困難を抱えている。経営改善の方策,資金難,高齢化と後継者不足,地域経済の縮小等々。しかしながら,地域の中小企業がたちいかなければ,地域の経済社会が成り立たない。限界集落ならぬ限界経済社会を支えているのが地域の中小企業である。中小企業立法は,まだこの現状に追いついていない。むすびにかえて筆者は,現在,中道一心学兄や本学の同僚たちとともに,商工会議所・商工会の研究に取り組んでいる。これは,あわせて地域の課題の解決の糸口を見いだす作業でもある。本稿の続編は,商工会議所法及び商工会法の歴史及び実態に関するものとなる。本稿は,この研究のいわば序論として,私が今まで考えてきたことを整理したものである。私の研究は,緒についたばかりである。22 庄林二三雄『中小企業と地域社会』同文館(1976年10月)は数少ないそうした研究である。しかしながら,過疎地域における中小企業に関する記述は残念ながら極めて少ない。23 拙稿「過疎地域における小規模事業者の性格と法制度」『近代企業法の形成と展開』成分堂,1999年