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概要

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82 高知論叢 第114号本稿の課題は,地域運営組織が営むビジネスの性格について,住民による住民のためのビジネスのあり方はどのようにあるべきか,地方自治の観点から検討することである。中山間地域におけるビジネスは,一般的に大きな利益はあげにくい。地域住民を支えるだけでなく,地域住民に支えられるビジネスのあり方が求められるが,住民に支えられ活動が持続的なものとなるには,何よりビジネスの必要性が地域住民の合意に基づいたものでなければならない。そこで本稿では,地域運営組織の具体的事例として,山口県山口市阿東地福地区において活動しているNPO 「ほほえみの郷トイトイ」を取り上げる。同NPO は,地域のスーパーの撤退を機に立ち上がり,買い物支援と交流拠点の運営を大きな柱として取り組んでいる組織である。同組織のビジネスのあり方,考え方は,住民自治の理念が位置づいていることで,地域運営組織の営むビジネスの性格を検討するうえで重要な示唆をえられるものである。1.地域運営組織が営むビジネスの性格(1)中山間地域における「小さな拠点」と「地域運営組織」形成への期待国が策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版(以下「総合戦略」)」では,人口減少問題の克服と成長力の確保を中長期展望とし,2020年までに達成する基本目標として4点をあげている。4点の基本目標の1つとして「時代に合った地域をつくり,安心なくらしを守るとともに,地域と地域を連携する」というテーマが掲げられており,テーマの主要施策の1つとして,「小さな拠点」の整備目標数1000か所,住民の活動組織(地域運営組織)形成数5000団体があげられている。「総合戦略」によると,「小さな拠点」は2017年5月時点で908ヶ所,地域運営組織は2016年10月時点で3071団体が全国で確認されている。「総合戦略」における「小さな拠点」の概要説明によると1,人口減少や高齢化が著しい中山間地域等においては,一体的な日常生活圏を構成している「集1 「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」,p. 96。