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概要

kouchirouso_114_20180329

84 高知論叢 第114号う二重の課題に直面していることが,地域運営組織の議論の背景にある6。そこで,地域運営組織が,「実行」を中心とした地域活動への住民の参加密度を高め,人と人のつながりを強くし,地域の資源を最大限活用することにより,生活支援サービス需要の増加と「民(市場)」「共(集落)」「公(行政)」によるサービス提供機能の低下によって生じた隙間を埋める役割を期待されているということである。(2)「地域経営型」自治としての地域運営組織の運営地域運営組織は,「地域経営型」の自治の中で経営的な観点や手法を用いて具体的に事業を実施する実働部隊の役割を担うことが期待されている7。総務省のいう「地域経営型」自治とは,地域を経営する視点に立って地域の将来ビジョンを「協議」し,そこで決められた指針に従って地域住民自らが「実行」するというものとされている。「地域経営型」自治という概念については,総務省の報告書では詳細に検討はされていない。従来でも地域経営という概念において定まった定義がなされてきたわけではないが,多様な構成員の水平的な協働による主体形成の実践は,地域マネジメント(=地域経営)として,内発的な地域づくりの実践として従来から議論されてことでもある。地域マネジメントにおける新たな地域マネジメント組織の重要性について,坂本誠が地域社会を構成する3つのシステムの空洞化への対応という観点から簡潔に整理している8。地域社会の構成を,社会(家族・地縁集団・機能集団など)・経済(農林漁家・工場・商店など)・政治(役場・議会)の3つのシステムから構成されているとすると,現在は3つのシステムの空洞化が連鎖して起きている状況だという。そこで,地域社会の再構築に向けた対応策としての新たな広域的地域マネジメント組織の設立の意義について,広島県安芸高田市川根地区振興協議会を事例に明らかにしている。坂本によれば,新たな地域マネ6 出口(2015),pp. 43-44。7 総務省地域力創造グループ地域振興室(2016),p. 5。8 坂本(2014),pp. 135-159。