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概要

kouchirouso_114_20180329

住民による住民のためのビジネスの必要性 85ジメント組織が,地域内の各主体を接続するプラットフォームづくり(社会システム)・「小さな農協」づくり(経済システム)・「小さな役場」づくり(政治システム)としての役割を担うことで,住民自身の力で,従来のシステムを代替補完する地域社会システムを再構築する取組であると評価されている。一方で,坂本は,「地域運営組織モデル」を構築し,他の地域に適用する際の留意点に言及している9。地域運営組織のモデルは地域を問わず普遍的に適用できるものではないこと,地域住民による自発的・自主的なものでなくてはならないこと,の2点である。自治体や政府の誘導による地域運営組織の政策的な普及・拡大は,行政による地域運営組織の下請け組織化,「地域切捨て論」の手段と化す恐れもある。地域運営組織に関して何よりもまず政府や自治体が行うべきことは,住民による自己決定に対する制度的保障であり,自己決定そのものやその内容を強制することではない,ということである。「地域経営型」自治にもとづく地域運営組織は,まず住民自治に基礎づけられなければならない。住民の自己決定によるものであるべきで,政策として強制されるようなものではないからである。同時に,団体自治の観点,行政による支援の役割も等閑視してはいけない。地域住民主体の地域運営組織の活動を軌道に乗せ,活動を安定化させるためには行政の多様な支援が求められるし,地域運営組織を立ち上げられない地域の生活を守るためには最終的に行政の力が必要になるからである。住民自治と団体自治の両輪で地方自治が充実するものであるから,「地域経営型」自治は,自治体も含め,多様な地域主体の協働関係のもと,地域の合意形成に基づいて,地域住民の生活を保障するべく実行を行う,というようなものでなければならない。(3)地域運営組織と住民主体のビジネスの関係性地域運営組織は生活サービスの維持・確保をはかるだけではなく,地域における仕事・収入の確保をもたらすことも期待されている。現状の地域運営組織が直面する課題については,国の地域運営組織に関する有識者会議の最終報9 坂本(2017),pp. 157-160。