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概要

kouchirouso_114_20180329

86 高知論叢 第114号告では,6つの点が指摘されている10。それぞれ,①地域運営組織の法人類型,②人材育成・確保,③運営資金の確保,④事業に必要なノウハウの取得,⑤行政の支援や連携のあり方,⑥都市部における地域運営組織の取組の意義と可能性,ということである。本稿ではすべての点について検討する余裕はないため,③運営資金の確保,という観点を重視して検討をすすめていくことにする。運営資金の確保という点については,国の有識者会議の最終報告において,法人組織となった地域運営組織が継続的に活動していく上での課題として「活動資金の不足」を上げる団体が全国の調査の結果として最も多かったことが指摘されている11。そこで,地域運営組織が事業計画立案を行う段階においては,行政や外部組織からの支援に全面的に依存するのではなく,組織が提供するサービスについては受益者負担を原則とする等,できるだけ自力による多様な資金の確保策について検討する必要があるとされている。特に,地域住民の生活サービスを維持するための活動(商店・ガソリンスタンド,地域交通等)に関しては,厳しい経営状況であることが多いため,低コストの運営を図るともに,地域住民への利用の奨励,利用者からの適切な料金の徴収,行政や外部支援者からの支援等により運営資金を確保し,持続的な活動につなげていくことが必要であるという。一方で有田昭一郎は,地域運営組織の性格と経済事業(稼ぐこと)の相性について議論される機会が少ないことを指摘している。そこで,地域運営組織で具体的な経済事業の導入の検討に入る前段階として,2つの点が問われるべきであるとしている12。有田の指摘する1点目は,地域運営組織の活動と経済事業に求められる構成員や意思決定プロセスの違いである。地域運営組織の活動は多様な構成員の参画と民主的な議論に基づき展開することを理念としている。他方,経済事業に携わる組織は経済活動である以上,企業と同様に事業目標の達成のための必要な人材を集め,責任と権限を集中させ,スピーディーに活動展開することを指10 地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議(2016),pp. 9-10。11 地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議(2016),pp. 19-21。12 有田(2017),pp. 77-78。