ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

kouchirouso_114_20180329

住民による住民のためのビジネスの必要性 87向せざるをえない。その差異が意識され,組織運営の中で対処されなければ,相互に活動が抑制,阻害されることがあるのではないか,ということである。指摘される2点目は,地域運営組織に対して期待されている持続性と実際の経済事業の継続性の違いである。地域運営組織の活動は次世代に引き継がれるものと想定されているが,経済事業には寿命がある可能性が高い。仮に地域運営組織の活動や資金の経済事業への依存度が高くなれば,地域経営組織の活動自体が停滞するリスクも生じるのではないか,ということである。本稿では,地域運営組織と経済事業の関係について検討するために,山口県山口市の阿東地福地区において活動しているNPO 「ほほえみの郷トイトイ」を具体的事例として取り上げる。NPO 「ほほえみの郷トイトイ」は,総務省による調査研究において地域運営組織の先進事例として取り上げられていることもあり13,地域運営組織が営むビジネスの検討事例として,一定普遍的なものを見出すことができると思われるためである。2.山口市阿東地福地区・NPO 「ほほえみの郷トイトイ」の取組(1)山口市阿東地福地区の概況阿東地福地区は,山口市の北東部に位置する中山間地域である14。2010年1月,阿東町が山口市に編入合併することによって山口市の一部となった。旧阿東町は1955年に篠生,生雲,地福,徳佐,嘉年の旧5ヵ村が合併して誕生した経緯がある。地福地区の自治会数は21を数える。山口市全体の人口推移とあわせてみると,地福地区のある阿東地域は市内で最も人口減少率のすすんでいる地域になる(表1)。1980年から2010年までの30年間の人口減少率でみると,阿東地域は42.3% の減少率になる。一方で,山口市全域の人口は増加傾向であり,特に人口増加率の高い地域は100% 近い人口増加をみせている。山口市は全体として人口増加傾向にあるにしても,いわ13 総務省地域力創造グループ地域振興室(2016),p. 51。14 阿東地福地区の概況については,「ほほえみの郷トイトイ」提供資料および山口市ホームページの情報に基づいている。