国連ニューヨーク本部において、世界各地の平和維持ミッションを含む国連の人事・調達・IT・医療分野等の調整を担うオペレーション支援局の、局長室戦略支援チームの一員として働いています。主な業務としては、国連事務次長(局長)の会議に際しての発言要領・背景資料のとりまとめ、スピーチの作成、文書の最終確認、各部署との連絡調整などがあります。現職の前には、国際NGOやJICA(国際協力機構)という組織に所属して、アフリカのザンビア・ケニア・南スーダンなどの国で、妊産婦の死亡率を下げるための母子保健事業、紛争から逃れてきた難民への教育支援、紛争影響国で民族間の融和を促進するプロジェクトなどに従事していました。
大学進学においては、将来国際的に仕事ができる素養を身につけることができ、かつ本気でサッカーができる場所を探していて、最終的にこれらの要件を満たす高知大学人文学部(現・人文社会科学部)を志望しました。
多種多様な考え方を持つ仲間や先生方と会えたことです。異なる価値観や考え方が多くある中で、ゼミや大学生活を通して友人や先生と議論・意見交換できたのは、その後国際的な場でさらに異なった背景や考え方を持つ方々と仕事することに役に立っています。また、サッカー部においてもプロになるような選手たちと共に切磋琢磨できたことは「一つのことにコミットし、自身のスキルを改善しつつチームとして戦っていく力」を伸ばすという意味でも、その後の人生にとっても貴重な経験となりました。
毎週・毎日サッカーに打ち込みながらも、それ以外の時間は大学の授業で英語や教職、国際社会、各国の比較文化などについて学び、授業以外でも興味のある本や文献を読んで広く社会のことを知ろうとしていました。
私は怪我の影響もありサッカーで活躍できないことも多かったのですが、そのような怪我でプレーできない期間には特に英語の勉強に多くの時間を割いたりして、サッカー以外でも自分自身の成長を実感できるように努めていました。幸い高知大学には英語や外国語を本格的に学ぶためのカリキュラムがあり(専門英語EPICプログラムなど)、自主的に勉強することを補助してくれるLanguage Learning(LL)教室などもあったので、それらを頻繁に利用していました。
私は大学ではサッカーに重きを置くことを決めていたので、高知大学から海外の大学に交換留学するプログラムなどもありましたが、それらを利用することはありませんでした。しかしながら、所属ゼミでのリングリー先生からの紹介で、アジアの国々やアメリカ・ロシアなどの学生と世界の問題について議論し文化交流をする「アジアンユースフォーラム」という東京で開催されたプログラムに、1週間程度ではあるものの3回生の時に参加しました。その際に、英語でのコミュニケーションに苦労しつつも、各国の若者と交流したことによって、世界の問題についてより興味を持つことができ、多様な背景を持つ人たちと協力して問題を解決をする楽しさに気づくことができました。また、海外の学生との交流においては「文化や宗教・考え方は違うものの、人として大切にしていることは変わらない」ということに気づかされ、それ以降、国際的な場において「違い」よりも「共通点」を見るようになりました。
もちろんずっとスポーツや学業に集中していたわけではなく、時には大学の友人やチームメイトと遊んで息抜きをして、メリハリのある生活を心がけていました。
世界には多様な価値観であふれていることを知り、チームや国際的な場での効果的なコミュニケーションの基礎を学ぶことができました。また、社会や国際的なことを学ぶうえで、学生の間にすべてを知ることは当然できないものの、授業や学生生活を通じてその後の人生で学び続ける素養を手に入れることができたと思います。その「学び続けるための基礎」はその後の仕事や、卒業後3年してからの英国大学院留学、また今の仕事においての学びにも続いていると感じます。
大学で学んだ「多様な価値観や文化的背景を尊重すること」は今の仕事に直接通じています。自分の価値観に照らし合わせて物事や人の行動についての良し悪しを判断するのではなく、相手の心情や文化・宗教的背景を尊重しながらコミュニケーションを取り、お互いにとってより良い形での仕事・物事の進め方を見つけていくことが国際的な場で働くうえでも重要であると思います。
高知大学では、自分が本当に学ぼうと思えば、授業・ゼミや施設を利用して興味のあることを集中して学ぶことができる環境があると思います。また、交換留学プログラムや、ちょっとした国際交流の機会の情報も、先生や友人を通じて手に入れることができます。少しでも自分でやってみたいこと、学びたいことがあるならば、積極的に情報を集めてみて、学生の間にチャレンジしてみてほしいと思います。
私自身、学生の間にチャレンジした経験をもとに「自分が何にでもなれる・何でもできると仮定したら、どんな仕事がしたいか」という問いを自身に投げかけて、やりたいことを明確にしてから今の仕事を志しました。そして大学卒業後にも、その目標に向けて必要な要件(英語力、修士号、職歴など)を一つ一つ達成していきました。
目標を立てた後はその時の状況によって都度目標を修正していけばよいので、大学の間に仮でもよいので「目標・やりたいこと」を決めてみて、目標に向けて必要な要件をクリアしていくやり方も、将来に向けたアクションの一案かと思います。一方で、個人的には例え大きな目標が見つからなくとも「家族や、コミュニティ、身近な人を大切にすることを軸に生活する」といった考え方も、一つの生き方としてよいのではないかと思っています。正解は1つではないので、ぜひ大学の間に頭と身体を動かしながら、自分の将来について試行錯誤してみてください。
▽金森大輔(かなもりだいすけ)
▽勤務先:国連事務局ニューヨーク本部オペレーション支援局
▽山口県出身
▽人文学部国際社会コミュニケーション学科卒業
▽2023年1月 掲載