人文学部から人文社会科学部へバトンタッチ。
受け継がれるもの、変わりゆくもの。

座談会に集まってくれた1年生と3年生、じつは所属が違います。3年生は人文学部の3つの学科で学ぶ先輩たち。一方、1年生は2016年4月に生まれた人文社会科学部の学生たちです。新しい学部では、1学科3コースへと組織が変わるとともに、高度な専門性と柔軟な発想力を身につけるための新たな学びのしくみをつくりました。改組によってどこが新しく変わり、バージョンアップされ、そして今までと変わらないものは何なのでしょうか。学生たちの戸惑いや問い、新しい学びへの期待など、さまざまな思いに各コースの先生たちが答えてくれました。

 

人文社会科学部・学部長

吉尾 寛

高知県安田町出身。専門は中国近代史。ゴジラ映画が好き。最近は調理器具にハマっている。

改組後初めての1年生。不安もあったけれど、ここで勉強したいと思っていた学びはしっかり受け継がれている。

人文学部が人文社会科学部に改組されて初めての1年生です。受験するときに新しい学部になるということは知っていたと思いますが、気になったことはありましたか。

YHさん 学部が新しく変わるということで、大丈夫かな?という不安もありましたが、入学してみると、そういう不安はすっかり消えてしまいました。

MSさん 私は大学で英語を学びながら、いろんな人とコミュニケーションをとれるようになりたいと思っていたので、高知大学の国際社会コミュニケーション学科を志望していました。でも改組になり、そのコース名から「コミュニケーション」という言葉が無くなってしまって、どうなるのだろうと不安でしたが、こうして1年間学んでみて内容的には自分が勉強したいと考えていた学びと、そんなに変わっていないのかなという印象です。

NSさん 先輩たちは社会経済学科、私たちからは社会科学コースです。受験するときに同じ高校出身の先輩に聞いてみたのですが、あまり詳しいことはわかりませんでした。でも、別のコースの学問も学べる「プラットフォーム科目」というのがあるのを学部パンフレットで知って、楽しみにしていました。実際に入学してから「リサーチリテラシー」という授業では、ほかのコースの先生がまわってきて別のコースの学問にふれるという体験ができました。先輩に聞くと「私たちのときにはそんな授業はなかったよ」と言われたので、ああ、そういうところが新しく変わってきたのだなと実感しています。

 

一方、3年生は今回の改組をどのように感じているのでしょう。

MRさん 最初に改組されると聞いたときには、いよいよ文学系が無くなってしまうのかと心配でしたが、新しいコースの内容をみて、そういう基本的なことはそのまま残って受け継がれていくのだなとわかって安心しました。

SAさん 改組されても、がらりと中身が変わってしまうわけではなく、今までとそこまで大きな違いはないのかなと思っていましたが、1年生と話していたら、この授業が新しく必修になったのだなとか、私たちのときとは違ってきているなと感じるところもあります。

MYさん 入学してすぐの1年生には、旧学科と新コースの関係がわからない人もいました。新旧で対応する学科/コースなら、授業の内容や先生など変わっていないところについて、ぼくらも先輩として教えてあげられることもあるし、つながりも持てる。学部や学科の名前が変わっても全然気にしていません。

 

 

先輩たちのアンケートから、新しい学部の生き方、より専門性の高い学びのスタイルが生まれた。

「変えるところは変える、変えないところは変えない」というコンセプトを持って、学部長以下、教員が力を合わせて新しい学部をつくったわけですが、学生たちの話を聞いてどのように思われましたか。

吉尾 人文社会科学部に改組するためのモデル、グランドデザインを考えていた2014年、私たちは人文学部すべての学生からアンケートをとりました。現在のカリキュラムのままでよいのかどうか、改善するところはないかなど、そのなかで「自分はこういう専門だと言えるような専門性を身につけて卒業したい」、「改組するのなら、分野の違う人たちとも交流を深めたい」というような声が多くありました。
 新学部に人文科学、国際社会、社会科学という3つのコースをつくったのも、その学生たちのアンケートを根拠に大事な選択、決断をした結果です。だから新入生の皆さんには「人文学部と人文社会科学部はきょうだいだと思ってほしい」とお話ししています。
 では、どこが変わったのか。人文学部は元々、学科の垣根を越えて自分の興味のある科目を自由に選択できるシステムでした。新しい人文社会科学部ではあえて、なぜそんなふうに他分野の科目をとるのか、そういう意味や意義も理論化して教えています。そのうえで自分たちの専門性をキープしつつ、違う分野を勉強する。そういう意味での新しい仕掛けのひとつが、プラットフォーム科目です。学びにそういう広がりがあるというのも、人文社会科学部になって生まれた良いところではないかと思っています。

 

社会科学コース・教授

緒方 賢一

東京都東村山市出身。専門は法社会学で、農業や農村の法律関係を研究している。県内の農産物直販所をまわるのが趣味。

 

MYさん

社会経済学科3年。高知県須崎市出身。労働問題について卒論を書こうと考えている。将来は映画監督になるのが目標。

 

緒方 専門性と学際性、専門コースを中心にいろんなことを学んでいくというふうに、自分の学びのコンセプトがはっきりしたと思いますね。今までのカリキュラムだと、社会経済学系だったらどんな科目もとろうと思えばとれるのだけれども、それではあまり専門性というところまではいかなかった。
 しかし、NSさんたち新しい社会科学コースの場合は、経済理論、経済政策と経営会計、法律と4つの専門の柱を立てて、そのどれかを中心に専門的に学んでもらう。それを結集させて卒業論文を書いていくことになるだろうと思いますが、その際に必要な学びが人文科学コースや国際社会コースにあることもある。
 そういうことを総合的に学ばないと幅広い分野を視野に入れたような大きな卒論が書けないのではないか。ある学生をみていて感じたことをきっかけに、この新しいカリキュラムに変えたといういきさつがあります。
岩佐 さきほど、コース名から「コミュニケーション」の文字が無くなったというお話がMSさんからありましたが、じつはそれには理由があります。今回の改組で「国際社会コース」にしたのは、国際社会とコミュニケーションという2つの学びだけではなく、言語と文化と社会、プラス3地域を含めた6つの学びをつくっていくことを実感させるために名称を変え、バージョンアップしたいというのが大きな狙いです。

それと同時に、3学科体制から1学科体制に改組することによって、学びの幅を広げようということも目指しました。国際社会コースの中だけでなく、人文科学コースや社会科学コースのいろいろな分野を学べるのはメリットが大きいということもあるので、今までの学科・学部をバージョンアップさせ、学びのコアを作りながら、いろんなことが学べる仕掛けをつくりたいというのが、今回の改組の狙いでした。国際社会コースでも、2年生からゼミが始まり、卒業まで同じ先生の指導を受けられるなど、今までと同じように基本的に学びの連続性を持たせていますから、どうか安心してもらいたいと思います。
大櫛 人文科学コースで言いますと、人間文化学科3年生のMRさんの場合は、2年生にあがるときに、人間基礎論、地域変動論、そして言語表象論という3つのコースのどれに所属するのかを決めて勉強してきたわけです。しかし、1年生のYHさんは2年生にあがるときにどこか「所属」を決めるわけではない。アドバイザー教員と相談しながら、どのプログラムを中心に自分の学びを組みたてていくかを決めるだけです。そのへんが先輩たちとは違ってきています。たしかに少し自由度が増えたとも言えますが、専門性を身につけるという点ではそれほど大きくは変わっていません。

あたらしい学部/コースは自分たちのカリキュラムより開けたものになっていると思う。

後輩たちが学ぶ新しい学部のカリキュラムとそのねらいについて、人文学部3年生の皆さんは、どんなふうに受け止めましたか。

MRさん さきほど、大櫛先生からコース選択がなくなったとお聞きして、それがすごくうらやましいなと思うので、新しく変わったことをそのまま続けていってほしい。私は日本文学を学ぼうと入学したのですが、勉強しているうちに他のことが面白くなって、今は中国文学を専攻しています。後輩たちにもそういう柔軟性のある学びを体験をしてほしいし、視野を広くもって見てほしい。そのほうがいろんな見方が生まれてよい勉強ができるのではないかと思います。
SAさん 国コミ(現・国際社会コース)はゼミが始まるのが2年生からと早い。1年生でどういう先生が講義をしているのか、まだ解らない段階で選ぶのは大変だろうとは思いますが、私の場合は入学したときからやりたいことがあったので2年生から4年生まで同じ先生の下で、かつ少人数で勉強できるところはよいと思っています。このゼミナールのスタイルはぜひ変えないで続けていってほしい。
MYさん 緒方先生のお話を伺いながら、振り返ってみれば、まだ自分は「専門性」があまり身についていないかなと思います。その専門性が身につけられるような「学びのしくみ」ができたということは卒論を書くために有意義と思います。そのうえ、新しいコースでは自分で選択していろんなものを取り入れることができるなど、とても開けたものになっているので、すごくいいと思います。ぼくも人文社会科学部に入りたい(笑)。

 

国際社会コース・教授

岩佐 和幸

大阪府大阪市出身。専門は国際関係論、アジア経済社会論。東南アジアと農業開発が主な研究テーマ。趣味はカフェめぐり。

 

人文科学コース・教授

大櫛 敦弘

東京都東久留米市出身。専門は中国古代史。趣味は落語を聞くこと。高校時代は落研、大学時代はクラシック音楽同好会に入っていた。

 

分野に縛りが無いのは、自分の中で眠っている可能性を見つけるチャンスだと思う。

先生や先輩方のお話を聞いてどうですか。

NSさん 入学してまもなくマイポートフォリオ(注.学生が自分の学びを記録し確認するために、レポートやアドバイザー教員との面談記録などを綴じるフォルダ)を渡されて使っていますが、自分も1年生の今からレポートをとっていく整理の仕方を工夫して、4年間の自分の学びを辿れるように資料を貯めて積み上げていきたい。専門科目をしぼっていけば、マイポートフォリオでも専門性の高まりを確認できると思うので、自分のためにしっかり使えるよう心がけていけたらよいと思います。

 

NSさんが言うとおり、マイポートフォリオは3年生から本格的に始まる専門分野に関する学びでますます活用できるはずです。MSさんとYHさんは専門を深める学びについてどう考えていますか。

MSさん 私は国際社会コースですが、歴史や日本の文学も好きなので、他のコースの授業も受けられて、知識が自分の中に蓄積されて貯まっていくのも楽しいなと思います。でも、やっぱり自分で何かひとつ武器になるような専門を持って、それに関連するような他の授業もとっていけたらいい。あれもこれもと手をつけて、結局、自分が何をしたいのかわからなくならないように、自分が意識して自分がやりたいことは大きくひとつ持っておきながら、ほかにも関連づけて授業をとっていけたらいいのではないかと思います。
YHさん 私は日本文学にとても興味があり、大学ではそれしかとれないと思っていたということもあって、日本文学プログラムをとるんだと思って入学してきました。でも1年間学んできて、私は英米文学とか外国の文学にもすごく興味があったのだと気づきました。だから、今の段階でその分野でやるのだという縛りがないというのは、自分の中に眠っているかも知れない可能性を見つけられる機会でもあって、そこがとても魅力的なところです。他の大学に行っている友達の話を聞いていても、もう今の段階から卒論はこれで書くというテーマをだいたい決めておかないといけないからキツいなと言っていて、「ああ、自分は高知大学に来て良かったな」と思っています。広い視野で自分の大学での学びを考えていけるというのはずっと続けていってほしい学びのカタチだと思います。

 

NSさん

社会科学コース1年。愛媛県宇和島市出身。商業の教員免許を取得したい。コラボレーション・サポート・パークで友達と団体を立ち上げ、大学生と地域をつなぐ活動をしている。

 

大学の学びをつくっていくというのは、もちろん教員が授業をとおして、いろんな学問的なことを中心に指導していくわけですけれど、このような学びに対する学生たちの熱意を聞くと、教員もしっかり頑張らなければ、と身の引き締まる思いがします。

高知はアットホームな県民性。自然が多く、ごはんもおいしいし、とても暮らしやすい。

ところでMYさん以外は、皆さん県外の出身です。入学前と入学後で自分が変わったところはありますか。また高知の印象なども聞かせてください。

NSさん 私は同じ高校から高知大学に来る人が数名しかおらず、しかも学部も違うので不安でした。でも、すぐに友達ができましたし、高知大学は縦のつながりが強くて先輩たちがとても親切です。初めての一人暮らしですが、すぐに連絡がとれる友達や頼れる先輩もいてくれるので、安心してこの1年間過ごせました。また、初めてよさこいにも参加してみて、高知に来て本当によかったなと思いました。都会と比べたら遊ぶところも少なくて不便だなと思っていたのですけど、人もやさしくて、高知はアットホームな県だなと思いました。

 

 

MRさん
人間文化学科3年。長野県岡谷市出身。軽音楽部でバンド活動をしている。キーボード担当。卒論テーマは「中国の映画からみる中国の就職活動」にしたいと考えている。
MSさん
国際社会コース1年。徳島県徳島市出身。2年生からは英文学のゼミを専攻する予定。カフェをめぐりなら高知の隅々まで知りたいと思っている。
YHさん
人文科学コース1年。広島県広島市出身。文学に興味がある。趣味はスポーツ観戦。サッカーと野球が好き。

MSさん 知らない場所で一人暮らしをするのはとても不安でしたし、親の苦労も身にしみました。でも、自炊や洗濯もやればできるのだなと少し自信も持てた1年です。私のまわりでは都会に進学した友人が多く、遊ぶ所も多くてすごく楽しそうでうらやましいなと思っていましたが、高知大学は自然に囲まれていて自分の生活を豊かにできる。やっぱり高知に来てよかったなと思っています。

YHさん 私もやっぱり、広島県から四国に渡るというのは勇気が要りました。最初は誰一人知りあいもいなくて不安だったのですけれど、高知大学は全国いろんなところから学生が来ているので、高校までの小さなつながりとは違って、人のつながりがすごく大きい。いろんな考えを持った人に出会って楽しい一年で、あっという間だったなと感じています。それに実際に住んでみると、高知はとても暮らしやすくて、人もやさしいし、ごはんもおいしい。私には合っていたようです。

 

1年生の話を聞いて、SAさんやMRさんも思い出すことがあるのでは。

SAさん 私の友人の多くは福岡市内の大学に通っていて、話を聞いていると華やかで楽しそうでうらやましいなあと思っていたのですけれど、夏に初めて四万十川や海に遊びに行ったり、よさこいもそうですが、高知の文化にふれていくうちにどんどん高知のよさを知って好きになっていって、3年たった今では愛着がわいてきて、高知いいよ!とみんなに薦めています。
MRさん やっぱり、高知はごはんがすごくおいしい!長野県は海がないので魚のおいしいところで暮らせて幸せです。私は高知に来るまで路面電車も見たことがなくて、最初は乗り方がわからなくてオロオロしていたら、乗客の人が教えてくれて…高知はみんな明るくて温かい人たちが多いですよね。

 

最後に高知出身のMYくん、皆さんの声を聞いてどうですか。

MYさん 自分は、高校のときは大学にいくという選択肢はなく、東京に出てそのまま映画監督になる夢をめざそうと思っていました。でも、いきなり都会に出るよりは、いろんな県からきた人たちと交流して、先輩たちとのつながりを持つということも大事だと思ったので大学に進学しました。なにより都会より高知のほうが間違いなく自然の美しさや食べ物のおいしさは勝っていると思うので、こうして高知のよいところをみんなに知ってもらえて嬉しいです。

 

皆さん、ありがとうございました。学生の皆さんには、これからも充実した学び、充実した大学生活を送ってほしいと思います。頑張ってください。

SAさん

国際社会コミュニケーション学科3年。福岡県柳川市出身。国際交流サークル「国際茶屋」で活動中。卒論は「東南アジアにおける日本語教育」について書きたい。

 

 

 

メニュー

close

close